【雲】 使用人 リフル[流石に治療が済まないまま出て行く気はなかった。 我が儘を言って申し訳ないと領主様達には頭を下げたが。 右手は動かないままでも、 左手の指はなんとかくっつけてもらったか。まだぎこちない動きになるのは、ここで出来る事が限られていたからだろう。 この屋敷を出て、 行先は、盗賊団が次に向かう予定だった国、それから、 今迄荒らして来た町や道や家だった。 そこ迄は、出自を明らかにしたシャーリエにしか教えず、 表向きは「義手を完全に直す。できれば右手も治療法を探す。ついでに慈善事業をします。戻って来るかはわかりません」と言って屋敷を出ようとした。 資金は今迄の給料では足りないだろうけれど、 まぁ考えはあるので何とかするつもり。 それより、最初は一人で生活は難しいと思ったので、 誰か人手を貸してほしいとは願い出ただろう。 それから、] お嬢様、 オレが旅立つ日には お嬢様のピアノを聴かせてくれませんか? [彼女がピアノの部屋で泣いていた日から二、三日後にそう乞うた。 だって聴かせてくれると言っていたもの。 厚かましくても、おこがましくても、 彼女の好きなピアノの音を、貰って行きたかった。**] (D39) 2020/10/07(Wed) 12:41:41 |