【雲】 使用人 リフル[殺さずに撃退できるなら良かった。 でもそうするには、己は弱過ぎた。 何度も「殺す」と声にして、時に叫んで、 同じ命と肉体を持つ人間を斬った。 弱い心が恐ろしさを感じそうになれば、 自らを洗脳する様にまた「殺す」と言葉にした。 そうすれば、何度でもナイフを振るえた。 二人でも三人でも立ち向かって、 斬り返される痛みにも、肉の感触にも決して怯む事なく、 道を赤に染めた。 今怖い事は、 斬られる事より、死ぬ事より、 彼女が傷付く事だった。 だから一人残らず殺すしかない。 一人が怯んで命乞いをしかけたが、 聞き入れずに喉を裂いた。 崩れゆく男の手の刃物が己の右手を滑って、お返しの様に深く裂いた。思わず呻いたが、連中を一人残らず始末する迄、この手は動いてくれた] (D65) 2020/10/04(Sun) 10:57:11 |