【人】 行商人 美濃[月が中天に差し掛かるまでの間、露店にはいくらか客足もあったろうか。 もしかしたら、杖をついた長髪の男性と連れ立った壮年の男性の姿もあったやもしれない。 榛名の地の人々や、女と同じ旅の客でも、物珍しげや興味ありげに眺められるだけでも。 祭の前のそわそわとした雰囲気に囲まれて、ちょっとした非日常を提供できていると思えば、少女の頃を思い出して狐の面の下の顔は綻ぶ。 観月祭が本格的に始まる頃には、店を畳み、商品を鞄へと背負い込んで“うさぎ堂“へと足を運んだ。] 「今晩は、月見団子はまだあるかしら」 [うさぎの面の給仕に声をかければ、昨日告げていたとおりに持ち帰りで団子を所望する。 繁盛していそうな様子だし、売り切れもあるやもと思ってはいて。 取り置いてくれていたことがわかれば機嫌良く、追加でおはぎと芋ようかん>>1:31も包んで欲しいと頼んだ。 団子がなければ他の品でもと考えていたけれど。 並んだ和菓子を見てしまっては、想像だけではない口内のしあわせが欲しくなってしまったもので。]** (0) 2022/10/03(Mon) 10:12:59 |