【人】 花で語るは ソニー【バー:アマラント】 「こんにちは、ロッシさん。今日の花です。最近は出入りが多いですねえ、大変なことだ。 どちらにおきましょう、あっち? こっち? 表でいい? 裏口のほうに? あっと! お代お代、オレが帰るまでにツケといてくださいよ、けど一杯もらおうかなあ」 この国のビジネスシーンにおいて酒が振る舞われることは珍しい話ではない。 そして、それしきで潰れる人間もりっぱな大人であればありえない。 花屋の男はせわしなくバーに上がり込むと、片隅を飾る色彩を抱えて運んだ。 普段からそうなのか、祭りのために飾られているのかは不明。 ひょっとしたら間違い配達なんてこともあるかもしれないな。 そんな中、喉を潤すために一杯のカクテルをもらって唇を湿らす。 視界に見知った顔があったなら、にこやかに笑って手を振るだろう。 されどあくまで表の知り合い、気さくな花屋の顔見知りとしてだ。 くるくると表情のよく変わる男を、裏稼業と結びつける人間は少ない。 同じファミリーの中にいないのであれば、尚更だ。 (1) 2022/08/08(Mon) 21:30:32 |