【人】 聖杯のジン ナディルジンに人間の母が居るのは珍しいことだろう。 ナディルの母は神殿に仕える巫女のひとりだった。 あるとき天啓を得て神の寵愛を受け、 子まで為した。 ───それがナディルだ。 ジンであることも、その力も 生まれる前から母親には知らされていた。 ナディルは神の子としてそれはそれは大事にされ、 神殿の奥で傅かれて育った。 物心つく頃には、母と共に 礼拝堂で人々の願いを叶えるようになった。 祝祭日には祭壇で父たる神にも目通りを賜った。 それは確かに輝かしい日々だった。 ……母親が亡くなるまでは。 思えば、母に相当守られていたのだろう。 母を喪ってから、ナディルは人を導けなくなった。 誰の願いを叶えても、皆不幸な死を迎える。 何故上手くいかないのか 全くわからないままに失敗を繰り返し、 挙句の果てに『怠慢の罪』で 父たる神に罰を受けて煉獄に堕ちた。 (1) kintoto 2021/09/20(Mon) 21:17:53 |