【人】 水子たちの霊 ヒルコー死体安置室ー 積もった埃が舞い、僅かに水気を含んだ空気が、すえた臭いを発している。 肌に触れれば、汗ばんだ時に似た不快感を感じるだろう。 そんな中で、ふと。 水面で泡が弾けるような音が響く。 見れば、室内の隅。 最も暗闇が濃い場所から、小さなあぶくがたっている。 ひとつ、ふたつーー…。 何かが近づいている事を示すように、あぶくの数は多く、そして間隔は短くなっていく。 やがて、あぶくの根本から、何かが立ち上がる。 最初に頭が見えて、それから手が、上半身が…。 そうして、影の中からは現れた姿は、存外に小さく、子供ほどの背丈しかない。 (2) 2022/08/08(Mon) 12:58:12 |