【人】 食虫花 フィオレ同じ頃、近くのショッピングモールで記念セールが行われているらしい。 朝から景気よく花火も上がっていて、パレードも相まって人通りはいつもよりも少し多いくらい。 キャップを目深に被って、カジュアルなパーカー姿の女が人込みの中を歩いている。 ノーハンド通話でもしているのか、ぶつぶつと何かを呟きながら。 花火を眺める人達の間を縫っていく。 「―――」 長身の男が、視界に入る。 目を細める。口元のインカムに何事かを呟いて。 後ろから近付いていく。その匂いは、姿は、よく知っているものだったから。 殆ど至近距離。背中に近付いて、口を開く。 「―――Ciao.」 そんな声は喧騒にかき消される。 背中に突き付けた拳銃が、間違いなく右の胸に向けられて。 人差し指が、引き金を引いた。 消音器で抑えられた音は、花火にかき消えてしまうだろうか。 それでもそれは確かに、放たれたのだ。 #BlackAndWhiteMovie (3) otomizu 2023/09/26(Tue) 21:53:37 |