【人】 晨星落落 ヌイバリ目を閉じて、しばらく後のこと。 部屋に皆が戻ってきて、無事な人もいれば無事ではない人もいて。 それは分かっていても、どうにも目を開けることができなくて。 指先だけが熱くて、頭が急速に冷えていく。 まだ息をしている。けれど、それだけだ。 側から見れば眠っているように見えるだろう。 寝ずに待ってる、という言葉を嘘にしないためにも、意識だけは保っていた。 このまま指先から燃えていっちゃったりしないかな。 そんな馬鹿なことを、熱に浮かされた頭で考えていたところ。 ぶす、と遠慮なく腕に針が突き立てられた。 そのまま薬液が体内に注入されていく。 「痛ぁ!?」 思わず声が出た。 と同時に、体の自由が戻っていることにも気づいた。 あれあれ、おかしいな。殊勝に覚悟を決めていたはずなのに。 目を白黒させながら、数日ぶりに会う女性の姿を見て。 ああ、結木さんのことを信じてよかったな、とだけ、 最初に思ったのだった。 (3) 2022/06/13(Mon) 15:25:58 |