【人】 死神のジン ナディルバザールの雑踏を漂うように歩く。 すれ違う者たちの連れる様々な獣の吐く腥い息と 欲望の甘く饐えた匂いに酔いそうになりながら。 クラクラと揺れる視界のなかで 、、、、、、、、、、、 それを愉しんでいる自分を愉しむ。 あまりに浸りすぎると あとで宿酔にも似た頭痛に悩まされることも含め、 ナディルにとって街中の散歩は一種の遊戯だった。 『──おい』 何処かから、耳慣れない声が届く。 『ナディル』 雑踏に埋もれそうな覇気のない声音なのに それはやけにはっきりと響いた。 『──オマエのこと、教えてよ』 腕の鎖に導かれるように振り返ったその先で 人波のなか、ぽつんと立っていたアルバリは まるで迷子のような瞳をしていた。 (4) kintoto 2021/09/18(Sat) 21:13:04 |