【人】 埃運び オーウェン>>@3 「誰に悪いことを、だって?」 都市の道すがら。相変わらず険の深い表情をした配達屋が、 異邦に向かう詩人を待ち受けていた。 傍には大鷲を連れて、その背を撫でながら。 「まさか忘れてた、なんて言うわけじゃないだろうな。 仕事を持ちかけられたってんなら、 そのチャンスを逃すわけにゃいかないんでね」 ホイッスルを片手にそう不敵に笑いかける。 埃運びは露ほども知らない。目の前の彼が、 やがて称されることになる名前のことを。その所以を。 「依頼料は受け取った。 『もう行く』ってのは……“そういうこと”だろう? わがままな客の為にここまで出てやったんですわ」 封筒を片手に。配達屋に配達なんて、 とんだ皮肉をやってくれたもんだ。 お陰様で、怒りの力が行動まで赴いてしまった。 (5) 2021/12/19(Sun) 2:16:55 |