【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>3 ──パン、と音がする。 ぱっと花びらが幾つか舞った。パレードの列から薔薇の花が散る。 傍で鳴った花火のせいで、もしくは遠くの合図のせいで、銃声は随分と目立たなくなった。 子どもたちの笑顔のはるか上を通って、凶弾は晴れの日の空気を切り裂いて、 それでも他の多くに見咎められるわけでもなく、顧みられることは少なかった。 貴方の別れの言葉は届かなかった。けれど、その"指"は確かに届いた。 着弾の衝撃で長身が二度ほどたたらを踏む。 右胸から遅れて血が流れて、かふと血の匂いの混ざったため息を吐いた。 後ろに一歩、二歩と退いて、ゆっくりと前を向いた。 貴方を見つける。男の瞳は貴方を見据えた。 忘れるはずもない。貴方のことだって、男は覚えていた。 子どもたちの笑顔の傍にいつづけた貴方の優しい表情を、男は忘れていやしなかった。 #BlackAndWhiteMovie (5) 2023/09/26(Tue) 22:02:28 |