【人】 京職 一葉初夏の今日は、五穀豊穣を祈る祭りの日。 絵巻物のように煌びやかな牛車神輿が練り歩き、絢爛な飾りをつけた馬隊や舞人、命婦らの行列が目を楽しませてくれる。 百継様がその行列を臨む茶屋に私たちを呼び寄せた。 宴席を支度するゆえ、皆で祭りを楽しもう、と。 果たして誘蛾様と氐宿様はいらしてくださるだろうかと気に掛けつつも、私は約束の刻の少し前に、徽子を寺の門前に呼び出した。 折り悪く勤行の時間帯だったようで、本堂からはあの不快な香の匂いが強く漂ってくる。 顔を顰めて鼻を袖で覆う私に、何故此処に呼んだと問う徽子の顔は涼しいもの。 あやかしとしての器の違いをまざまざと見せつけられつつ、私は徽子を伴い寺の奥へと歩んでいった。 (5) Valkyrie 2021/04/26(Mon) 17:12:59 |