【人】 封じ手 鬼一 百継■フレーバーシーン:この都について その昔……遠い昔。 あやかしの湧き出る間欠泉のような、人間が近付くことが能わぬ地があった。 当時の帝に命じられ、そこに陣を敷き、封印を施したのが、鬼一の先祖だ。 鬼一は、封印を監視し、護るために、この地に居ついた。 すると自然と、鬼一家に仕える豪族や民たちもそこに住む。 こうして、鬼一が治める今の都が出来上がった。 百継は、この都のことが好きだった。 民は良く鬼一を慕い、官人たちはみな有能で、情に厚い者ばかり。 百鬼夜行という困難が、一層、この地を愛する心を強くした。 さて、貴族とは自分の足で歩くことを好まぬらしい。 このような都の往来、大通りなら尚のこと、牛車の中から姿を現さぬのが常である。 しかし、百継は、都を歩くのが好きだった。 わざと宮仕えの小童に見える服を着て、目立たないようにすることさえある。 今日も、そんな日だ。 自分が護る地を自分の目で見てまわること、それが百継の喜びのひとつだ。 冬を越え、はっきりと明度をあげた陽が額に差し、頬に当たる風も温もりを帯びている。 春ももう終わろうとしている。 大通りは行きかう人々の活気であふれていた。 (5) TSO 2021/04/20(Tue) 22:59:36 |