【人】 封じ手 鬼一 百継>>1 誘蛾 感情取得:憧憬/劣情 === >>5続きから そうして町歩きを満喫し、そろそろ帰ろうかといったところで、百継は、聞き慣れた新鮮な音を耳にした。 「!」 振り返ると……当たりだった。 風来者の吟遊芸人のように、道端に立ち、弦楽器を鳴らし歌う彼の音楽家、誘蛾がそこにいた。 あや あや そおれ どうぞ…… どうか ひとつ 見ては ふたつ 聞くたび さしのべ さそふ あやかしの…… 誘蛾の奏でる音楽は、不思議だ。 胸が鈍く痛む程懐かしくも、星の音より珍しくも感じられる。 透き通ってまっすぐに心を通り抜ける、透明な音いろ。 彼女は、仮にも鬼一邸に部屋を置く宮廷音楽家の身分にある。 望めば、最上級の香を焚いた部屋で美しい織物に囲まれ、主人に命じられた時のみぽろぽろと弦をはじいていれば良い。 むしろ、それが推奨される態度だ。 (6) TSO 2021/04/20(Tue) 23:16:06 |