【人】 封じ手 鬼一 百継なんと身勝手なことであろうか。 傍から見れば継置の身分を登用したように見えるかもしれないが、なんのことはない、儂は継置の一生をねだったにすぎないのだ。 継置は普段、やや無頼で武骨。 感情を幾らか大袈裟に歌いあげることを善しとする貴族文化に馴染んでいるとは到底言えぬ。 多くを語らぬ男だ。 儂も、変わった。 甘えたがりだった己を律し、常に当主たる振る舞いを意識するようになった。 弱音も、卑屈も、かたく閉じ込めた。 だから9年間、聞けなかったのだ。 禁欲的なまでに真摯に鍛錬に励み余所見をせぬ彼が、いま、何を歓び、哀しんでいるかを。 だから9年間、言えなかったのだ。 儂にとって、継置がどんな存在であるかを。 [* or] (6) TSO 2021/04/21(Wed) 22:32:50 |