【人】 因幡 フウタ……………… [古い家の中へ侵入する隙間風を凌ぐ様に、いつもひとつの布団でくっついて寝ている───夏も同じ様にしていた気がするけれど。 だから伸ばした手は隣に寝ていた理恵をぎゅうと抱き込んでいた。 目が覚めて一度我に返った様に腕をゆるめたが、 理恵をこの手に抱き締めていると認識すれば、 また少しだけ、腕に力を込めた。 理恵は起きていただろうか。 今ので起こしてしまったのだとしても、「寒い」とか言い訳しながら抱き締めていた。 彼女の頭を胸に抱える様に身を寄せていれば、 顔は見られずに済む筈だ。 苦しい様な、泣きたい様な、叫び出したい様な、安心した様な俺の今の表情は、 きっと酷い顔だから。 夢の中では俺を置いて行ってしまった理恵。 彼女が俺に愛想を尽かしてどこかに行ってしまう不安も勿論だが、 そんな事あり得ないと頭を振ったって、 残りの寿命の差を突き付けてくる様で堪らない。 離してはならない。 離したくないと、暴れる心を押さえ付ける様に、 脚も使って小さな彼女の身体を抱え込んだ] (6) 2020/12/25(Fri) 7:44:02 |