【人】 家族愛 サルヴァトーレ【街中】 「────さ、着いた。ほら起きて、お姫様。それとも目覚めのキスが必要かい?」 「……なあに。まだ足りないの? はは、欲張りだなぁ。光栄だけど、僕はこの後用があってね」 「もう、そう拗ねないで。代わりに取っておきのプレゼントがあるんだ────なんだと思う? 当たり!」 「うん、勿論だ。愛しているよ。また顔を出すさ、すぐにね」 「じゃあまた、可愛い人!」 高級感のある黒い車の扉が開く。小柄な女性が姿を現す。こじんまりとしたアパートのドアを開け、その中へと消えていく。 男はそれを最後まで見送っていた。いつも通りの笑顔を浮かべて。 いつまでも家の前に留まっているのは無粋だろう。少し広めの通りへと車を走らす。再び路肩に止めて降り、伸びをする。時間を確認。まだ予定までは余裕がある。 行きつけのバーで時間を潰すか、手頃なカフェにでも入るか、車内で仮眠を取るか。しばし立ったまま悩むようだ。 (7) 2022/08/08(Mon) 22:54:29 |