【人】 高山 智恵 焦がれる程の想いはあった。確かにあった。 夜の夢に彼女の姿を映しもしたし、昼の現に一人勝手な願望をつい思い描いたりもした。 他にもあれやこれや――その話はまた少し後にするとして。 そんな夢を見続けていたいつかの時だったか。 それとも本当は、最初から判っていたことだったか。 私は知っていたんだ。 彼女の目はいつだって、ひとりの男を見ていたんだって。 「それでも」「あるいは」「もしかしたら」 そんな、自分に都合の良い思考を連ねたりもしたけれど。 告白するだけしてみる勇気もない癖に「もしも」の期待ばかり抱く自分に嫌気が差してきて。 いい加減、綺麗さっぱりこの想いは断ち切らないとなって――この頃はそう考えるようになったんだ。** (7) 2022/10/12(Wed) 19:51:47 |