【人】 ハリの豺狼 カナイ>>+3 >>+4 弓日向 そうして刹那に嵐は過ぎ去って。 再びの静寂と、それから徐々に血臭に満たされ始めた廊下。 ゆっくりと広がっていく血溜まりと、横たわる少女を見た。 能力の起源に紐付いた奇妙な安堵は長続きしない。 だから今この胸の内を満たすものは。 その思いを理解できたばかりの少女を失った事によって齎された 喪失感と、悲しみと、それから人を手に掛けた罪悪感だった。 「………弓日向さん」 ほんの少し軽く、けれど脱力しきって重く。 まだ温かい身体をすぐ近くの仮眠室へ運び込んだ。 野晒しは忍びなく、けれど会議室へ連れて行くには憚られた。 「あなたはあの時自分の事を薄汚い人間と言ったけど、 おれはそうは思いませんでした」 寝台へと寝かせて、瞼や唇が開いたままなら閉じさせて。 その横で殆ど唯一の遺品となるであろう端末に指を滑らせた。 連なる望みと、呪詛と、それから。 そして、あなたの最後の言葉を思い返して目を伏せた。 「おれの方がずっとどうしようもない」 そんな人殺しに感謝するだけでなく、生きろと言うなんて。 いったいこれから何処へ生きて行けと言うのだろう。 (8) unforg00 2022/06/07(Tue) 5:05:59 |