【人】 死神のジン ナディル此処に堕ちて、まず目にした人間たちの欲望は 地上のそれよりもずっと獰猛で多彩だった。 街中の風に満ちる欲望の匂いは 熟れすぎて腐り落ちた桃よりも甘く、 蠱惑的な芳香を放っていた。 目眩がしそうな程の興奮を 誰にも理解して貰えないことは知っている。 けれど同じ鎖に繋がれた彼らの飼う獣は 俺に応えてくれるだろうか。 シャフリヤールのコブラは高貴で綺麗だ。 ──だが、見飽きている。 アルバリの鷹は気高く優美だ。 ──だが、育ちすぎている。 抱き上げた仔虎のまだ柔らかい毛並みに 我知らず、笑みが零れた。 『──叶えて欲しい願いはあるか?』>>0:186 ───俺はまた、罪を犯そうとしているのかも知れない。 [パス] (8) kintoto 2021/09/18(Sat) 0:43:36 |