【人】 上原 隆司[彼女の名は何だったか、と上原は考え込んだ。 仕事について詳しく語った記憶もなく、話すことがあっても世間話程度だった気はしている。 それでもハーモニーに行って彼女がいると何となく嬉しくなる。上原にとって彼女はそのくらいには顔馴染みだった。 もっとも、彼女にとっては大勢いる客の一人かもしれないのだが。 どう声をかけたものかと上原は思案したが] お嬢さん、いくら? [とりあえずからかってみるか、という悪戯心が湧いた。 なんで落ち込んでいるかは知らないが、下手に気遣うより、反発を招いたほうが気も紛れるんじゃないか――そんな捻くれた心情が働いた末だった]** (8) 2021/02/27(Sat) 11:15:53 |