【人】 修理屋 一二三 あの馬鹿、春にも同じことやったばかりだろ。 [春の花見でも同じように ふらりとどっかへ流されてはぐれたくせに。 澤邑さんには悪いと思いつつ。 九朗の背中に追いつけなくなる前に目礼を返し、 杖で地面を叩きながら早歩きで後を追いかけた。 ガキの頃なら九朗が歩くよりも早く走って追いつき、 細い背中を捕まえて仕舞いだったのになぁ。 澤邑さんも驚いただろう。 二十歳前に揃って蒸気帆船に乗ったガキどもが、 十年後には夢を捨て、足を喪って戻って来たんだ。 少なくとも俺は足を無くしちまったことに 後悔はなかったんだが…。*] (9) 2022/10/03(Mon) 21:51:26 |