【人】 髪置>>1:L2 「ふぅ、あっつい。今日も何も取れなかった……」 投げ出された空っぽの虫かごをぼんやり眺めて、アイスを齧る。 先程戦った個体ではないだろうが、外からはうるさいくらいセミの鳴き声が聞こえてくる。 この家に来るのも久しぶりだ。 ここを離れて10年くらい経ったが、あの頃と何ら変わった様子がない。 夏の日差し、セミのうるささ、熱気。日に焼けた床に、白い便箋……便箋? 開けてみた。読んだ。首を傾げ、もう一回読んだ。 「……?」 もう一回読んだ。 「え、パシられてる?えーっと……涼風……薫くん!?うわ、これいつ出したん、え?わぁ、急がんくちゃ!」 まだ日も落ちてない、日差しの強い時間だ。数分待つだけでもきついだろうに。 走れ髪置。公園で友が待っている。アイスを。 数分後、恐らく百千鳥と遊んでいるところに猛スピードで自転車が駆け込んでくるだろう。 (9) 2021/08/11(Wed) 0:25:12 |