【人】 大富豪 シメオン[男は賢者のことを友と思っていた。 共に視線を潜り抜けた仲であり、共にこの街にやってきた。 賢者は男にないものを持っていた。 それは魔法であり叡智だった。 けれど、男は賢者の中に『美』を見出したことは一度もなかった。 だから男の選択は実に当然のことだった。 この街では、いやこの男にとって『美』よりも優先するものなどないのだと。 男はありとあらゆる手段を用いて二人の仲を破滅させた。 賢者は街を追われ、女は悲嘆に暮れながらもその悲しみが再び女の『美』を取り戻し、いやそれ以上の『美』となった。 男はその結果に満足していた。 その年の『フェス』で、女の『美』は抜きん出て並ぶものがなかった。] (10) 2022/11/24(Thu) 10:08:12 |