【人】 事務員 深瀬賢影が、床を這って広がっていく。 彼女の足元へ、壁へ、天上へ。 事務室全体が影に呑まれていく。 『今後、息吹さんが「淫魔について学ぶこと」、「無為に反発しないこと」を誓ってくれるなら、私は何もしません。』 四方から声が響く。 「人のようなもの」は、表情のない顔を彼女に向けるだけ。 『誓えないというなら、私が教えなければいけません。』 影がうねり、植物のツタにも似た形を取ると、彼女の脚に絡みつく。 1本、2本、3…、5…次々と沸きあがり、彼女の脚を這いあがる。 『どうしますか?』 私の課外授業を受けるか否か、彼女に委ねた。 * (10) 2024/11/11(Mon) 22:56:45 |