【人】 親友 編笠>>10 そこにたどり着くと、 ――自転車を叩きつけるように置いて、 流石に全力で漕いで来たので膝に手をついて長く息を吐いた。 その俺の隣を――子どもの姿の―― "添木の旦那"と"清和の旦那"が追い抜いていく。 汗に塗れた顔で、その後ろをよろよろと追いかける。 子どもの添木の旦那が、公民館の番号錠に手を掛ける。 それは、この村での記憶の"残像"だ。 "この村のカギの番号、全部頭に入ってるんだ。" 嘘吐けよ。子どもの頃は、間違いなくそう思ってたけど、 どこに侵入するにも番号錠をすぐに開けてた姿を覚えている。 だから――添木の旦那が言ってたそれは、 案外誇張なしで本当だったのかもしれない。 それを証拠に、俺が教えてもらった番号に錠を合わせると、 "見事に鍵は開かなかった"。 ……そうだった。俺たちが特に悪さをした大抵の施設の鍵は、 ある時期を境にドアの鍵を無意味なものにした添木の旦那のせいで 片っ端から取り換えられてたんだった。 本当、つくづく思い通りに行かせてくれねぇあの旦那! ▼ (11) 2021/08/17(Tue) 21:09:33 |