【人】 Chiabica テオドロ通報を受けてすっ飛んでいった路地の裏側。 平穏を乱すものから人を守るため、今日も馬車馬のように働いていた。 「……これで全部ですね。ええ、お疲れさまでした。 あなた方にしては手際が良かったんじゃないでしょうか」 上出来ですよ、と、部下達にたまの褒め言葉を添えておく。 暴行、強要、果てに威力業務妨害。 大層な罪状で押さえつけた輩どもが、 一人、また一人と車に蹴り込まれて行って。 その一人に近づけば忌々し気な目で睨まれたものだから、 面白味もなく薄く口角を上げた表情で、 心の内にあった憐れみと慈しみを混ぜ掬った。 「大方頭の茹った破落戸でしょうが、不運なこと。 最近就任なされた署長代理は少々潔癖症のようでね」 可哀想に、彼は何も知らない。 先に待ち受けてるものを。今この国を回してる者たちを。 「歌うならばお早めにどうぞ。 私は人道という言葉は好きですが…… それが適用されるのは良い子にだけです、おチビちゃん」 嘲笑交じりに言ってから、ドアを閉めた。 (11) 2023/09/02(Sat) 3:12:01 |