【人】 澤邑[ それから翌日には大時化に大雨である。歩いて行ける距離だし、大雨とは言っても榛名が揺らぐほどでもない(と勝手に経験則で予測しているが)長引きそうだというニュースも見かけたから先送りしてはこゆきが不安がるかと雨の中合羽を着て迎えに行くことにした。それから……*] は〜大変だった 拭くものを持ってきてくれ [ 傘はもう役に立たないと思って持っていかずにいたが、本当にその通りで。合羽の中にこゆきを収めた箱を抱えて帰ってきたのだが、自分の髪も顔もびしょ濡れになってしまった。 秋霖や合羽を一振り店に入るとはいかず、家の人間が出てきてちょっとした騒ぎになってしまった。澤邑家は先祖代々の店を構える呉服問屋で、そりゃあこんなびしょ濡れで店先に上がられては困るだろう。流石にこの日は雨で店も閉じていたのだが。 こゆきはすでに麻酔が切れていたが狭い箱の中に入れられていてまだ落ち着かない様子に見えた。すっかり乾いた布で髪や顔、それに濡れた手足も拭いて新しい着物に着替えた後、自室に連れて行き箱から取り出す。] …… [ 箱は自分が頑張った甲斐あって湿り気を帯びたくらい。こゆきの毛並みもほとんどふわふわのままだ。まだ元気のない様子に見えるが、人間の感傷だろうか。恐る恐る手を伸ばしてみる。**] (12) 2022/09/29(Thu) 3:52:40 |