【人】 鬼の花嫁 千暫くは大人しくしておいてくれよ 俺だって時間を掛ければ薪くらい割れるし風呂も焚ける 随分立派になったのさ、旦那様のお陰でな ま、その体格には何十年掛けてもなれないだろうがね [巻き終わり、仕上がりを確認した手を鬼の両頬に添えて顔を近づける。 額が合わさる距離で、口角を釣り上げて笑う。] なあ、誰かの言うことを気にするよりも こうやって俺のことを見ている方がずっといいだろう? [村人が千を見つけたということは、その逆もまた然り。 されど敢えて口にはせず、ただその心を気遣う。 少年時代から十年を失った頼りない身体の人間には、知ることも出来ることも非常に少ない。 大切に思えるものも、一つしか無かった。**] (12) 2021/06/26(Sat) 3:42:10 |