【人】 寡黙 エミール>>+5 ファリエ 「……俺には怯えてるように見えた」 握った手は、体格の違いはあれど。 苦労をしてる仕事人の手だった。 握ってたときは血の気が失せて冷たかった手も、今はいくらか暖かくなっているだろうか。 語りだしたのを見れば背を撫でた手を離して、しばらくその声に耳を傾けた。 「疑問か……。 誰がアンタを選んだのかなんて、俺は知らない。 けど……聖女に護られるにふさわしいと思われたんだろうな……」 光の灯らない自分の痣に手を添えて小さく息をつく。 光るか光らないか、それが自分たちの人生に大きく関わるということ。 たった痣の一つが、それだけが。 それだけは確かな話しのようだから。 「……信じられないのは俺も同じだ。 痣による加護のひとつ……、どちらが良いかなんて……俺には」 どうしても判断することが出来ない。 そういう意味ならよっぽど、自分も罰を受けるべき人間だろうに。 (12) 2024/02/06(Tue) 17:28:35 |