【人】 手探り ノル「……うん」 嫌いって、許さないって言われると、分かっててもすごく悲しかった。悲しかったのに、不思議とそれもそれで居心地が良くて。 この悲しさに浸り切ってしまいたくなる。 でも、続いたリディの言葉で、そうじゃなくなった。 「……そうなの?」 君は生きているから、返事がある。 一欠片でも、好きって思ってくれてたら、すごく嬉しかった。嬉しい。 「まだ……全部嫌いになってないの?喋るのも嫌じゃない?一番下じゃない?」 寝かせ終わったから、もう、穴掘りはおしまいだ。 土かけたりしなきゃいけないのかもしれないけど、それより。 やりたいこと、ぐるぐる頭の中で回っているような気がして、でも、僕に出せる答えはひとつだった。 ベリ兄がいくかな、って思ったんだけど。 「……リディ、あのね……リディともっと仲良くなりたかったな」 ふら、と立ち上がって、飛び込むように、リディに向かう。 手の中に小さい ナイフ を隠して。君が避けてたことだから、今までできなかったこと。どうして嫌なのか聞く勇気もなかったこと。 ぎゅっ、て思い切り触りたかった。これで好きが一欠片もなくなったとしても。 (12) 2022/07/26(Tue) 3:29:37 |