![]() | 【人】 因幡 フウタ[酒が入ってる訳でもないのに突拍子のない動きの理恵>>5にハイハイと生返事をして、出発の時>>6には「理恵もいい子にしてろよ」と心の中で少し不安げに願った。 でも期待の方が大きかったか。 何せ しんこんりょこう だ。 一生に一度の大切な思い出の旅……… と、わくわくそわそわする気持ちは、電車に揺られる時間が長くなっていくごとに薄れてゆく。何せ暇だったから。意識も薄れていって、理恵に何だか詩的な言葉で励まされたりした。 外を眺める時間は理恵の方が長かっただろう。 己はそう珍しくも思えなくて、うとうとしてしまったから。 風景よりも、窓の外を眺める理恵を見つめていた。 俺と違う感性を持つ彼女は、 変わりゆく景色を見て何を思うのだろう。 それは尋ねる事なく、 時々外に見えるものについて言葉少なに話したりした。 目的の駅に着いた頃には、 こんなしっとりとした時間の過ごし方も悪くなかったなと思った。 理恵と一緒に身体を伸ばして、理恵に倣って鼻をひくつかせた。 「温泉の匂いかな?」とか言ってみるけれどさっぱり自信はない。 やがて進んだ先、店からの匂いが強くなって、良い匂いじゃなあとか言いながらも、夏祭りの時の様に寄り道せず宿へ一直線した。 りゅうぐうじょうへの架橋はそこから水がよく見えたからか、理恵は怯えた様子でべったりくっついてきた] はは、こわがりじゃの。 [「かわいい」とかよりも「ウケる」といったニュアンスでふっと笑ったが、向こうから歩いて来た客らしきおばちゃんたちがこちらを見て微笑ましげにくすくすしたから、己も恥ずかしくなってしまった。 理恵を引き剥がす事はしなかったけど] (13) 2020/12/29(Tue) 4:59:31 |