【人】 ふくろう ホウスケ[それはそれとして少女は小ぢんまりとした洋館に住んでいた。 二人泊まれるぐらいの広さはあったし ひょっとしたらそれを進めてくれたかもしれないが 宿を取っていたので、しばらくすれば解散しただろう。 洋館を出たころには、外は真っ暗になっていて おれの目にはかえってちょうどいい。 丘からは海が一望できるようになっていた。 二月、本島はかなり暖かい日も花粉も増えてきたが 瑠璃人の育った北海道は冷たい風が吹きすさぶ。 よく晴れた満天の星空は 住んでいる場所よりもはるかに澄み渡っていて 凍り付くような星々の光がよく輝いていた。 だけど、黒い波のうねる海原は 夜空よりも真っ黒で、墨でできているみたいだ。 ときおりぷかぷかと昆布が浮いているのが見て取れて あれが天然のベッドになるんだろうけど。 特に空は荒れていないのに、大きくたわむ水面に あそこに母に死なれた赤ん坊ラッコが浮かんでいたら……と 一瞬で波に飲まれる様を思い浮かべて、ぞっとした。 ……ありがとう、と少女にもう一度礼を言う。 瑠璃人を助けて、育ててくれて。] (13) 2021/02/21(Sun) 17:18:29 |