【人】 「狂」の神 アネーシャ◆ナハト 返信 歌を聴き、歌を歌い、歌を奏で、歌を愛して、 そうしてその全てに飽いたところで、 「……アネーシャ?」 己が名を呼ぶ、義神に出会った。 この神に光は似合わない。否、光こそ彼に相応しいのかもしれない。 夜の闇が相手の表情を隠す。何を思って声をかけてきたのかはわからないけれど、それでもおおよその想像がつくのは、ひとえに付き合いの長さ故だろうか。 それが本心かどうかはわからない。 神とは言え嘘はつく。神だからこそ嘘はつく。 真実なんて、世界のどこにも見えはしないのだ。 そう、愛のように。正義のように。平和のように。 目に見えるもので確かなものなんて、この世界にひとつだって在りはしない。 だから、ーー…… アネーシャは考えるのをやめて、振り返ったその顔に笑顔をつくった。 「ごきげんよう〜♪ そうねぇ〜……、 わたくし今は、夜よりも、あなたが好きよ」 (13) kikimi 2019/10/05(Sat) 8:57:45 |