【人】 北神 翡翠車を走らせること30分ほど、海沿いから少し外れて山間に入ったところに、洋館風の建物が現れた。店の駐車場に入って車を停めると、セーターからスーツのジャケットに着替える。君も靴を履き替えるとかしたかな。これまでの行程をずっと、ヒール付きのパンプスで移動するのは大変だったと思うし。 「これ、どう?……着けてきたよ」 誕生日にもらったネクタイに着けたのは、クリスマスにもらったネクタイピン。>>0 ずっとセーターの下にあって見えなかったと思うけど、最初からここに居ました〜、なんてね。 服装が整ったら、店の入口へ向かう。 先に扉を開いて、君を中へ通してから自分も続く。 受付で名前を伝えれば、窓際の席へと案内された。 店内の照明は明るすぎず、落ち着いた雰囲気だ。 カジュアルが売りというだけあって、客の服装は様々だが、 小さな子どもを連れたファミリー層は居ないようだ。 席に着くと、飲物の注文だけ聞かれる。 車で来ているからと、ノンアルのシャンパンを頼んだ。 君はアルコールを頼んでもいいけど、おでんの時の前例もあるし、きっと同じものにするかな。乾杯する用だしね。 グラスが運ばれて、一人分ずつ目の前で注がれる。 給仕が去った後で、二人でグラスを掲げた。 「改めて誕生日おめでとう、海瑠…───乾杯」 グラスの側面をそっと触れ合わせた後、 一緒にシャンパンを含んだ。 (14) 2024/01/05(Fri) 0:26:59 |