【人】 聖杯のジン ナディル「俺はお前に『導かれたい』と思ったことはないよ。 『導く』のも『導かれる』のも、もう要らない。」 ……俺はそんなに変わったんだろうか。 少なくとも『サーリフに望むこと』は あんまり変わってないと思うんだが。 サーリフはなんだか少し神妙な面持ちで 俺の言葉を待っている。 そうして黙っていれば、 ちゃんと天使らしいのに。 けれど天使らしく在ろうとする故に 懸命にもがいて滑って転ぶ、飛べない片翼の姿は 地上での俺の姿に重なった。 「………堕天しないか?」 翼なんかラナーにあげてしまえばいい。 煉獄に居るなら要らないだろ。 誰の目を憚ることもないはずなのに ごく密やかに頬を寄せて、 俺はサーリフの耳に囁いた。 [パス] (14) kintoto 2021/09/21(Tue) 6:23:42 |