【人】 軍医 ルーク[ 出撃部隊が配置につく。 腕の中で、鳥が不安げな鳴き声をきゅう、と上げた。 不安なら中で大人しくしていればいいだろうに――と、 そう言いかけるけれど、もう遅い。 風のない世界に、風が吹く。 天に空いた黒穴から、『それ』が降って来る。 目を凝らしてもこの距離からは細部は見えないが、 そう、それは逆に――… この距離からも視認できるほどの巨体だということだ。 この世界に生きるどの生き物よりも遥かに巨大で、 あるいは建造物と比したほうが早いかもしれない。 “それ”は、咆哮を上げる。 幾百もの獣の吼え声のような、 金属をこすり合わせた叫びのような、ひどく不快な音だ。] (15) 2020/05/15(Fri) 1:19:26 |