[決まった場所で舞うのは、旅路で数か所。
止り木のように渡り歩き、舞う、
榛名はその一つ。
決まった地ではある程度の言伝も、
先代、あるいはその前から引き継いでいる。
義肢の調子を診た技師、ほつれた裾を繕った職人、そのような恩人の名は、それこそ礼を欠かぬようにと。
そして、代替わりを悟られぬように、その地で起きた事件など。
舞手東天は、常にこの世に一人きり。
継いで、繋げ、なぞり、長く長く旅を繰り返す。
繰り返し染み付いた流麗な舞に、少女のような可憐さなどはない。
舞にはそれぞれ役割がある。
この男にただ、その役目がないだけで。
>>#2**]