人狼物語 三日月国

184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨


【人】 略奪者 ラシード


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其の一瞬の変異は、例えるのならば
内臓が皮膚を食い破ったかのようにすら見えただろうか。
白い皮膚が裂け、赤い筋肉や黄色の脂肪が飛び出し。
銀の毛の塊をその隙間からざわざわと蠢かせながら
人間をひとまわり、ふたまわり超えた体躯へと肥大化する。
ごき、ごきん、ぱきん、  と圧し折る音は
砕けるよりも寧ろ、殻を破って成長を繰り返す地虫のよう。

口元を覆った赤い布がぱさりと落ちれば、
其処には鋭く、白い牙が並ぶ口が長く飛び出す。
じぶじぶじぶじぶ。肉に焦げ目を付けるようなざらつく音も
よくよく見れば滲出した体液が少しずつ、
巨大化した身体に皮膚を形成して覆っているのだとわかる。

毛虫が這い上がるかの如く其処に被さっていく銀の毛皮は、
研究者たちに撒き散らされ、ちらちらと大気を舞うそれとよく似ていた。


ぼろ雑巾のように小さく千切られてしまった毛皮を
血だらけの指でなお奪い合う学者たち。
その1人がふと、若い獣人だったモノの方に視線を向け。



         上げたのは、   
歓喜
の声であった。  ]
 
(17) 2022/11/10(Thu) 2:39:31