【人】 宵闇 ヴェレス[ 見知らぬ国でも迷うもなく、喧騒を辿ればじき市に着いた。 王が死に後継は定まらず、治安は悪化していると駅で買い求めた紙面で見たが、流通や商業に大きな影響はないらしく、活気盛んに商売人の声が飛び交う>>1。 もしかすれば平常時に比べ官吏の目の隙を突いた阿漕や粗雑が目につくのかもしれないが>>3、初めてこの地を訪れた自分にはわかりはしない。 見慣れない意匠の縫い取りで飾られた装束、嗅ぎ慣れない香辛料の香り、聞きつけない訛りの言葉。] なにか気になるものあった? [ 連れ合いに好き嫌いがないのは知っているし、自分も特段食べられないものはないからこういう時は都合が良い。 本当は食べ歩きながら市を遊覧できればよいのだが、片手に日傘、片手に食事に飲み物は無理がある。 露店に併設された大きな差し掛け傘が作る影にある卓を示し、そこに着いた。 薄いパンに、トマトと豆を煮詰めたディップ。干した果実に香辛料の強いコーヒー。買い求めた自分の分の朝食を卓の上に並べた。 それから、彼が駅で案内された宿>>5の書き付けを、見せて、とねだる。]* (17) 2021/04/14(Wed) 19:44:41 |