【人】 アジダル[ 寝覚めが悪いのは常たるもので、明晰夢に出会うことだって少なくはなかった。 あれこれと自分の体を書き換えられていく感覚に晒されて同一の価値観を維持することが難しいこと、夢に浸る感覚と突然自我を取り戻すタイミングがあること、一見して普段通りを保てるこの場が基準だなど言い切れもしないこと。 油断しているのか現実よりも幾らか緩い口はすらすらと状況を吐き出した。意味の有無はともかく。 ] 少なくとも、さっきの場面はこっちの昔の思い出だからな。 僕自身もなんか……昔の姿だったし。 [ ぽす、ぽす、と腰のあたりを叩く。三度目の接触で、何もなかったはずの場所にさっきまで使っていたガンホルダーがあった。四度目の接触で再び消える。 ……融通は或る程度利くらしいな、と目を細めて。 ] だからお前も僕が頭で作ったシグマなんじゃないの? なんか僕の知らない事言ってみてよ。 まだ話したことないようなこと。 [ 体を離して寝たと言うのに行き着く先が同じというのもなんとも奇妙な話だが。>>11 どのみち不可思議な事象について熟考するよりも対面して応対する方が向いているのだ。選択を迫られる場面に何度も直面していれば自然とその思考時間は短くなる。 先ほどまではつるりとしていた、今はあちこちを駆け回って傷跡が残る手を、一見して迷いも何も無いように、パーカーのポケットに突っ込んだ。 ] (17) 2020/10/04(Sun) 8:17:12 |