【人】 陰陽師 讃岐 氐宿■2d 秘密取得 誘蛾>>2:50 百継邸の前にて、優美な音楽が流れくる。 夜を賑わすその旋律は、世界の色を塗り替えるようで。 知らず、脚どりはそちらへと呼ばれていた。 「…………このような夜更けに、美しい音がすると思えば」 ふ、と眦を下げてその音楽家の前に立つ。 「その曲はどちらへ捧げるものでありますか?」 問い掛けて、答えるものがあるならば。そうか、と頷く。 満点の星々が、その音1つ鳴るたびにちかりちかりと瞬くだろう。 「誘蛾さま。やがて夜行がまいりまする」 「最早これは止められぬでしょう。問題は、その後、でございまする」 陰と陽、世界は流転し、地獄の蓋が開かれるのもある種自然の摂理であり。 故に人はどれほど先に手を打っても開くことそのものを止められはしなかったのだ。 「やつがれは都の方々が平穏であれと願っております。しかし、巡りを止めれば世の血も止まり、死に至る」 「誘蛾さまは、訪れる夜を明けぬ朝としますか。それとも、ひと時の朝としますか」 問答に意味は、大してない。 ただの確認、検めであった。 宮中に潜む闇の気配は、とうに漏れ出て溢れている。 鬼一も気付いて動き出していることだろう。 (19) mile_hitugi 2021/04/24(Sat) 7:37:38 |