【人】 神谷 恵太>>13 鑑沼(昨日) ──嫌な感じがする。 彼の、いや、目の前にいるナニカの感情が知覚できる。 『分からない』けど『解る』。 自分の中にあるよく分からない機構が、発信されている情報を正確に受信している。 自分を『見間違えた』誰かの五感にそれを撃ち込むために。 つまりそれは、自分の異能が効き始めている、ということ。 「……い、のう、を。 …………制御、……できるなら、」 言葉が出にくい。いつも通り、出にくくなっている。 震える手でピルケースを取り出す。 折角作ったカバーストーリーの意味はほぼなくなってしまうが仕方ない。そもそも鑑沼先輩に隠す理由もあんまりないし。 ただ。 「…………協力の、内容にも、よります。 けど。 ……何か、……できるなら、……お願い、したい」 そのためには、異能の蓋をしない方が都合が良いかもしれない。何をするつもりかは分からないけど。 ケースの中から薬を取り出す前に、じ、と相手の目を見る。 (19) 2021/11/07(Sun) 0:25:47 |