【人】 行商人 美濃[幾度目か箱を手にしては開けずまま、想いに耽る女に声がかかった。>>11 視線を上げれば昨日の、箱を抱えた男性が猫>>18を連れてやってきたところで。] 今晩は、良い月ね。 いらしてくれて嬉しい。 大事なお猫様の方も。 こゆきちゃん、というのね。 大切にされてるのがわかるお顔をしているわ。 [真っ白な毛並みに印象的な瞳の色。 想像を巡らせた面立ちより幾らか稚いか。 彼の口にした名は成程体を表していると女は思う。 手を伸ばしてみたくはなるが、ひと様の大事な子だ。 それは堪えて商品を見繕う。] そうね、鞠に、毛糸玉。 螺子式の蛙、蜻蛉の玩具なんかは猫じゃらしの代わりにはなるやも。 [薄桃色に赤と白の刺繍が施された小さな鞠に、手芸用の毛糸玉の色は数種類あったか。 螺子を巻くと数寸ほど跳ねて前進する絡繰の蛙は鮮やかな緑色をしている。 猫じゃらしになると思ったのは、細長い棒の先にテグスで繋がれた蜻蛉がぶら下がったもので、振り回して童が遊ぶためのものだ。 お眼鏡にかなうものがあれば良いのだけどと首をかしげ。] (19) 2022/10/01(Sat) 22:54:03 |