【人】 「和」の神 ペノル優しく、細い、伸びやかな少女の声が、耳を心地良くくすぐる。 これは、愛の歌だ。 ある人とある人が出会い、やがて愛し合うようになること。 それを、ただただ賛歌するための歌だ。 歌声には、こぼれんばかりの歓びが乗っている。 歌い手は、全身全霊をかけて、愛を信じ、愛を尊び、愛を愛していると知れる。 こんな声が出せるのは、ひとりしかいない。 歌が終わって拍手をすると、「愛」の神サティカルは少し驚いた様子で振り返った。 そして、ワタシの顔を見る。 「いつから聞いていたの?」 「2人の出会いのところから」 「最初から? 用があるなら声をかけてくれれば……」 「あんなに素敵な歌を邪魔なんかしたら、重罪さ」 「まあ。お上手なのだわ」 (19) TSO 2019/10/04(Fri) 17:59:24 |