【人】 小泉義哉[戸の隙間から、まっすぐな陽光が差し込んでいた。>>17 部屋も日常とつながったようだ。 ぐちゃぐちゃになった部屋着を身にまとい 「ジャングルだったらまたこの部屋に戻ろう」と笑いながらも 一抹の不安を胸に戸を開けると、 柔らかな木漏れ日が、二人の顔に降り注いだ。 さわやかな若葉と土の香りが吹き抜けて 部屋にこもった隠微な空気を清めていく。 ジャングルとは言わないが、つながった先は林だった。 戸から首を伸ばしてあたりをうかがってみるに 自分たちは古い納屋のような建物にいるらしい。 どうやら正門ではなく、裏口の戸を開けているようだった。 といっても、この古びたちっぽけな建物の外観と比べ 出られなかった部屋の内部は明らかに広く豪奢で いったいどのように次元が歪んで この部屋につながっているのか 全く理屈がわからない。] (19) 2021/06/13(Sun) 8:53:48 |