【人】 京職 一葉その直ぐ後に訪れた百鬼夜行で、その娘を助けようと思った事。 街を駆け、娘を探すために、妖共に襲われていた民を"利用"した事。 あるいは助けることも出来たやもしれないその者の、"がわ"を。容貌を髪を声を、その態の諸々を奪い、己のものとした事。 「かの娘は、結局、見つけること叶いませんでした」 妖を見、言葉を交わす能のあった娘はきっと連れ去られたのだ。百鬼夜行に。 あの時から己は、人の世を妖から守りたいと願うようになった。 2つの世界が交わるから斯様な事になる。人は人の世に。妖は、妖の。 何よりの災厄、百鬼夜行は阻止すべきもの、と。 「私……は、百継様の憎しみの対象でございますか……?」 それも当然の事と思う。 「この一葉、百継様に一度たりとも嘘は申しておりませぬ」 言えなかった真実があっただけ。 ただ、その真実が、この方にとっては、最大の禁忌だった。ゆえに、ずっと言えずにいた。 香を吸いずきずきと脈打って痛む身体が限界を越え、身体がぐらりと傾いでいく。 「どうか。……どうか百鬼夜行を御封じ下さい。百継、さま」 望むのは、本当に、只それだけ。 それでも許せぬならどうぞ私を御討取りをと、私はゆっくり眼を閉じた。 [パス] (19) Valkyrie 2021/04/23(Fri) 8:14:50 |