【人】 聖母 エリシア[どうにもできないことがあるのは知っていた。 子を連れ去って、それをよしとしているわたしが 子を幸せにできない親の罪を問うのはおかしな話だ。 それでもひとつ、静かに話を聞いていたわたしが 即座に反応してしまったのは、その言葉。>>7] 忘れたいんですか? ほんとうに? [つい責めるような口調になりかけて、 わたしは自分を諫めるように首を振った。] ……そうですね。あなたが忘れてくれたなら、 わたしはまだ、あの子と一緒にいられる。 そう思ってしまうわたしに、 あなたを咎める権利はない。 [けれど、彼女の言葉をよくよく反芻すれば どっちつかずで、とちらとも取れるような。 ……まだ我が子に向く心があるような。 そんなふうにも聞こえるではないか。 それとも、わたしの思い込みだろうか。 わたしはすこし、考えて。] (19) 2024/12/25(Wed) 6:09:31 |