人狼物語 三日月国

246 幾星霜のメモワール


【人】 白昼夢 ファリエ

「あのう。どうして私がこんなところに……」

協会に案内された女はこれから祭りが始まるという期待を忘れてきたような困り顔。
きょろきょろと周囲──その場に居合わせた人の顔ばかり──を窺っている。
冒険者が多いように思う。聖女の目に留まるような仕事を為した者なのだろうか。
思い巡らすうちに猶更居心地の悪さを覚えたけれど、見知った顔がある事に気づいて驚きと僅かな安堵を顔に浮かべていた。

「じ…自己紹介も必要なんですね。ファリエと言います。
 皆さんは今年の聖女様の祝福を受けた方々ですよね?
 それじゃあ私のこれも気の所為じゃないんですね……」

公式の場に不慣れなことが見え見えのぎこちない動きで頭を下げた。
それから腰まで流した後ろ髪に右手を潜らせる。どうやら彼女の痣はうなじに焼き付いたらしかった。
(20) 2024/01/27(Sat) 11:04:21