【人】 愛らしさで人類を支配するラッコ 瑠璃人[俺の勤め先については いくつか水族館や動物園にコンタクトをとっておいてくれたらしく、施設名と担当者を書いたメモを渡してくれた。 ……多分大っぴらにはされてないだろうが、こんなにどろんする動物に理解がある施設があるのかと正直驚いた。 ホウスケと離れないで済む圏内となると数は限られたが、 正直ルトリスを要らないと言う施設はないと思ったから、 案外すんなりと決まりそうでめちゃめちゃ希望に満ちた顔になった。ありがとうおばちゃん、と素直に感謝を伝えた。 シールを追い出すとか言い出すホウスケには俺は驚いたが、おばちゃんは「へえ、過激な子はキライじゃないけど」と口端を上げて笑った。 ラッコの移動にはリスクが伴うし、絶滅危惧種だから、ペアリングとかでない限り批判が起きそうだとか、虎乃がもし戻ってきたらウォソちゃんはやりにくいんじゃない?とかホウスケを宥めようとしただろう。 ジェンヌの事を聞かれたら「観る!!!?」と、背中に花を背負った様な笑顔になって、大きなテレビにDVDをセットしに向かった。 ジェンヌとはいわゆるタカラジェンヌ……宝塚の団員さんを指す言葉で、その説明で足りるだろうにおばちゃんは大画面に大音量で主に男役のジェンヌさんの魅力を見せ付け、時に解説を付け、時に「そう言えば」と急に俺達の話を聞きたがったりした。 「テレビの音が大き過ぎて喋れない」と音量をぽちぽち下げた時はおばちゃんは不満そうだったが、ホウスケとの馴れ初めや、今一緒に居て楽しい事を話せば、おばちゃんは「フーン」と口を尖らせながらも嬉しそうにしていた] 俺はそれ、見てみたい気もするがな。 [「おれがメスの恰好」とのホウスケの小声を聞けば、ふっと笑った。多分おばちゃんは似合わない女装も男装も好まないだろうからおすすめしないけど。 ……というのも、 出会った頃はまだしも、俺にはホウスケはどう足掻いてもオスにしか見えていないから。 背は低めだしオスにしては華奢だと思うし、 着飾らせて多少メスに近付ける事はできるかもしれないのだろうけれど、俺がホウスケをメスにするのは、きっと無理だろう] (20) 2021/02/21(Sun) 21:50:39 |